micro soccer diary

サッカー観て思うことすこし。

国際親善試合2023 ドイツvs日本で起きていたこと

 

 

①ドイツのビルドアップ

 試合が始まるとすぐに、両チームがGKからパスをつないでいく姿勢を見せる。

 守る側は高い位置にラインを作り、襲い掛かっていく。

 いわゆる『ビルドアップ』vs『ハイプレス』の構図。

 この構図は10分すぎまで続いた。日本がスコアするまで、と言い換えてもいい。

 

 ドイツのビルドアップはゴールキックと流れの中のプレーどちらも、キーパーのテアシュテーゲンを組み入れてスタートする形を採っている。

 ゴールキックは左CBのリュディガーがテアシュテーゲンにパスするところから開始される。

 ボールを受けるテアシュテーゲンは両足でショートパス、ミドルパスを蹴り分けられるという特徴を持っている。

 ドイツの両SBはライン際まで大きく開き、日本のプレス網を広げる役目を担う。と同時に中央3レーンにパスコースが見つけられなかった際の回避地点としても機能する。

 

 実戦ではテアシュテーゲンがビルドアップミスを犯す珍しいシーンも。

 それだけ日本のプレスが高強度だったという証であり、ドイツとしても負けられない戦いに臨んでいるという緊張を感じさせたシーンだった。

 

 

②日本のビルドアップ

 日本のビルドアップも直接的にロングボールを蹴り出すことはせず、ショートパスを紡いでいく姿勢が顕著であった。

 ビルドアップの布陣図は左右非対称型となる。

 狙いは何だろうかと見ていくと、インサイドハーフの高さの違いが挙げられる。

 左インサイドハーフの守田はDFラインに近いポジションが初期位置。

 役目としてはフリーな状態ならボールを貰いターンをして前に運ぶ。アンカーの遠藤が厳しくマークされている場合は下がって壁パスを受ける等、いわゆる2人目の6番である。

 

 一方の鎌田は右ハーフスペースに立ち、ポジションは高い位置に留まっている。

 中央のパスコースを増やすことよりも、上田のポストプレーの預け先の役割、または右サイドのフォローを優先しているようだった。

 

 日本のビルドアップは2つの段階に分かれている。

  1 自陣中央から左サイドでショートパスを繋ぎハイプレスを誘う

  2 守備密度の薄くなった右サイドへボールと人を送りこむ(浮き球OK)

 

 伊東vsシュロッターベックのスピードのミスマッチをカウンターだけでなくビルドアップでも生かす構え。

 また、右サイドの圧力を高めるため、菅原がタイミングをうかがいながらフリーランする動きも戦術的なアクセントになっていた。

 

 

③日本のスローインにおけるドイツのふるまい

 このゲームにおいてスローインは日本の課題事項となった。

 スローイン時のドイツのプレスはとても強く、日本はクリーンにプレーを再開するのに苦労している。

 特に日本の左サイドでタッチラインを割ったとき、逆サイドのニャブリが遠藤まで絞るため、中央を経由してサイドを変えるルートをすべて塞がれる格好となった。

 

 

④ドイツのセットオフェンス

 序盤を経て日本がリードする展開になると、次第に構図は移り変わっていく。

 日本はプレス開始位置を下げ、『ミドルブロック / ミドルプレス』を敷く。

 対するドイツは『ポジショナルアタック』で勝負を挑む。

 ドイツのフォーメーションは非対称な3-2-5。

 CBにフリーな状況が生まれると右SBのキミッヒが中央へ入る。

 アンカーのジャンが左ボランチに、ギュンドアンが列を大きく上げハヴァーツと共に2ライン間でレシーバーとなる変化だ。

 また、キミッヒ以外のDFラインは2CB+左SBの形を維持している。よってピッチ中央~左に多く人数配置している。

 

 これはザネを右サイドでアイソレーションさせつつ、大外から裏をうかがわせようという狙いがひとつ。

 もうひとつはギュンドアンを高い位置に送り込むことで、ハヴァーツを解放し偽9番として活動させる意図がある。

 ハヴァーツ、ギュンドアン、ヴィルツは3者ともにトップ下でプレーした経験を有しポジション交換可能であるため、ドイツのポジションチェンジに対処できるかが日本の命題として設定された。

 

 

⑤日本のセットオフェンス / ダイレクトプレー

 このゲームにおいて日本は試合開始~10:54秒18:30~21:23秒の時間帯をイーブンなスコアで戦っている。

 つまり残りの大半の時間帯をリードした状態で戦っており、カウンターアタックが日本の最大の武器になっていたことは間違いない。

 とりわけ後半の45分間はカウンターに焦点を絞り、前半と全く異なる受動的なゲームプランを用いていた。

 

 前半45分間に区切ると日本はリードしていてもしていないときも、ビルドアップから前線に良い状態でボールを渡す、というチャレンジを止めていない。

 ショートパスで相手のプレスを誘い出し、守備に偏りを生み出しスペースを突く。

 ロングボールを用いる場合でも『右サイドの数的優位を利用した裏へのフィード』『左WGへ対角線のサイドチェンジ』などWGに有利な状態でボールが届くように工夫が凝らされている。

 

 この試合においては遅攻も速攻も日本にとって自ら選んだ主体的な攻撃であり続けた。日本の攻撃は勇敢で、論理的であり、美しかった。日本はボールを持っていてもゲームをコントロールできることを示した。最も進歩を感じられた部分だ。

 

 

⑥ドイツの得点シーン(1ー1)

 ドイツのスコアは菅原のマークがブレたところから始まる。

 ニャブリを見ていた菅原は

→低い位置からDFラインへ再侵入してきたハヴァーツ

→ライン間のギュンドアン

→外でランの姿勢を取ったニャブリ

 計3回マーク対象を変えている。

 ラインから飛び出してギュンドアンを捕まえにいった板倉はターンを許し、マークのズレを使い続けたドイツは外で余ったザネが最終的にスコアした。

 5レーンによる4バック攻略のお手本のようなゴールであり、日本が後半フォーメーション変更を余儀なくされたのはこの得点が1点以上のインパクトを与えていたからだろう。

 

 

⑦日本の得点シーン(1-0)(2-1)

 先制点は2度のサイドチェンジが鍵となった。

 遠藤からサイドチェンジを受け取った三笘は縦へドリブルし、相手陣地を押し下げる。

 そこからのカットインは実らなかったものの、ルーズボールを左CB冨安がダイレクトでサイドチェンジ。

 右の高い位置に留まっていたのは鎌田。オーバーラップしてきた菅原と2対2の崩し。外でシュロッターベックを剥がした菅原のクロスにPA内3人が待っていた日本はニアサイドで伊東純也が触って1-0とする。

 

 勝ち越し点は日本のボール保持から。

 左CB冨安→右WG伊東へ対角のフィード。

 外側を追い越す鎌田、さらに菅原がダブルオーバーラップ。

 シュロッターベックに打つ手はなかった。

 鎌田と菅原の2つのランを認識しながら戻らなかったニャブリの責任は重い。

 

 

⑧日本の積極的守備

 日本の守備ブロックは4-4-2。

 守備の方法論はゾーンディフェンスを基調としつつ、部分的にマンマークを取り入れている。

 最もわかりやすく人につく守り方をしていたのは三笘。偽SBの動きをするキミッヒを追いかけて中央に絞っていた。(④図参照)

 また、ギュンドアンを遠藤、ジャンを鎌田が常に意識している。

 日本としてはドイツの非対称3バックにはボールを持たせても良いが、そこから前方に出るパスは全て封じる構え。

 

 さらにはドイツが低い位置でボールを後ろに戻すと、日本は前へ出る守備で圧力を強める。

 三笘が背中でパスコースを消しつつジャンプする。

 伊東が外を切りながらボールまでプレスをかける。

 遠藤がMFラインから飛び出してアンカーを潰す。

 個々がアグレッシブな姿勢を備えた守備スタイルは、ハリルJAPAN以後再三チームに求められてきたものであり、強豪国ドイツに対しても通用するレベルまで高まっている。

 

 

⑨日本の異なるビルドアップパターン

 ②で示した通り、日本のビルドは基本的に『左で溜めて右へ振る』がメインパターンだったわけだが、右サイドで繋いで左の三笘に届くパターンは最大の脅威となりうるものであり、その成功例も幾つか見つけられた。

 

 33分。伊東を狙ったフィードは跳ね返され、セカンドボールを鎌田が拾い菅原へ戻す。

 前向きでボールを保持するも、すぐ前方にはドイツのプレッシャーラインが形成されている。

 ここで秀逸だったのが遠藤と守田による『旋回』の動き。

 ギュンドアンにマークされていると認識した遠藤はあえてボールから離れる動きでマーカーの視野外に逃げる。

 代わりにアンカーとなった守田とワイドに居残る鎌田を中継点としながら右サイドでパスが紡がれていく。

 菅原→遠藤→守田→菅原→鎌田→菅原→守田… 6度ボールを動かすうちに、遠藤が守田の横へ並んだ。このとき、中盤の底のポジションは完璧に入れ替わっている。

 

 そして守田が遠藤へ巧妙にパスを通すと、三笘へのパスライン上に現れたのは左SBの伊藤洋だった。

 伊藤洋は逆サイドでのパス回しを傍観しておらず、ハーフスペースに絞りながらポジションを上げてビルドアップの出口となった。

 右サイドから始まったビルドアップを左WG三笘へ届けると、ドイツのザネはスプリントで自陣まで戻らざるをえない。伊藤洋は攻撃で先手を取ることで、対面の脅威を取り除くことができた。