「モダンサッカーの教科書」シリーズの第三弾。
著者 レナート・バルディ 片野道郎。
この本の題名になってる「モダンサッカー」は、この10年ぐらいのサッカーのことですね。グアルディオラのバルセロナ以後の。
バルディはイタリアで税理士をやっていて、サッカーから離れて生活していたが、ペップバルサに出会う。
「あのサッカーを解明したい」「意見を交わしたい」「じゃあ自分もサッカー指導者にならなければ」ってふうにのめり込んで行く。
現在はセリエAのアシスタントコーチ。
で、主にこのシリーズの優れているところは
「レナート・バルディ」による「モダンサッカーというゲームの定義」が読めることです。
グアルディオラ解説本としては後発組でそこまで目新しいことは書いていません。
サッカーの近現代史としてはけっこう読めるけど、たとえばゾーンDFの登場~変遷だとか、ペップバルサより前の出来事に関する記述は全然ない。ドイツサッカーについての内容も少なめです。
かたちとしては「教科書」というより「問答」で、これ一冊読んでもサッカーの公式や攻略法みたいなものはそんなに得られないんじゃないかな?と思います。
だからこの本の価値は、複雑で目まぐるしく変化する未知な現代サッカーについて、バルディから視点の開示がされているところですね。
「私にはこう見えます」「私はそう捉えました」「私はそう解釈しています」「そこまで言い切れるかはともかく」
ときに曖昧な言葉でサッカーが切り取られていく。
こんな見方ならいろいろ見えてくるよ、と。
セリエAのコーチはこのレベルまで知ってないといけないんだな、とか
ここまで習熟していてもまだ理解しきらないことがあるんだな、とか
バルディの言葉で語られるサッカーの世界はその広大さをうかがわせてくれます。
Ⅲの所感
本題。
まず「現代サッカーにおいてはポジションという概念で選手をみると本質を見誤るのでは?」みたいな問いかけが入る。
この辺はⅠ、Ⅱのおさらいのようなところがある。「ゲーゲンプレッシングはデータで測るとこういう現象で…」って話など興味深く読んだ。
GK、CBの項。細かい目の付け所が面白い。クリバリーの選手評でクリアに関する記述があるあたりマニアック。
SB、CMF、攻撃的MFの項は主に攻撃面のタスクについて。ポジションレスの話。
FWの記述が一番良かった。ボローニャのスカウトが実際の選手名を挙げながら現代FWの5分類について解説してくれる。
Ⅱに引き続き、サッカーの現在地について話しているような内容ですね。
未来予測になるとどうしても全て要求されるって回答になるので切れ味は鈍め。
もしもの問いに答えてる部分などはバルディの趣味趣向と本音が見えて面白い。
CMFをCBとして起用する場合の利点と欠点は?とか、ピルロを使うならどんなゲームモデルを作る?とか。
Ⅱ以後はサッカーに飽食な人が読むサッカー本かも。