ピッチ外 - ピッチ内
W杯以来の再戦。ドイツはEURO2024に向けて戦力の見直しを計っていたようだ。
親善試合を5試合たたかって1勝1分3敗という戦績。
敗れたベルギー、ポーランド、コロンビアはいずれも強豪であり、結果自体は起こりうるものだったが、肝心の新戦力発掘には失敗している。
日本代表の当面の目標は24年明けのアジア杯。
右SBに菅原、トップに上田と適任者を見つけている。
ドイツと比較して半年早くチームを作り上げる必要があったため、既存の戦力の再登用を行いつつ戦術のブラッシュアップにつとめた期間となった。
プレーモデル - ゲームプラン
プレーモデルという言葉から連想されるチーム、監督というのが何人かいる。
ナポリとサッリ、バイエルンとグアルディオラ、アーセナルとアルテタ、マルセイユとビラスボアス……
それぞれの監督が持つ強烈なエッセンスを反映し、選手が変わっても原則的なチームのスタイルは変わらない。いまならブライトンとデゼルビも含まれるだろう。
フリックもまた、プレーモデル的な監督のように見える。
フリックは…
・何もなかったコヴァチのバイエルンに多くの変化を加え、3冠制覇をもたらした
・ウイングのアルフォンソデイビスをSBに据えて、アラバをCBへコンバートした
・チアゴとキミッヒの小柄なテクニシャンふたりをダブルボランチに起用した
・ピッチ中央でボール支配を試み、敵陣内では対角線のパスからサイドアタックとゲーゲンプレスを連鎖させ、対戦相手を窒息させた
現状を変えることに躊躇がなく、勇気があり、頑固。
試合内容は一貫しており、相手に合わせて方針そのものを変更するなど考えられない。
森保はこれらの監督に比べはるかに柔軟だ。
森保は…
・3421という戦術システムを持ちながら、A代表で4231をメインフォーメーションにした
・鎌田、伊東、田中碧など中心的な選手が変更される度、戦術的な枠組みも変えた
・時間ごとの守備プランを用意し、ローブロックとハイプレスの両極を備えた
・交代策によって試合の流れを動かすエネルギーとテンポを加えた
森保一を定義するならゲームプラン重視の監督ということになる。
日本の戦術は予見不可能性が高く、チームスタイルは対応型。
状況の読み取り(アドリブ)を選手に要求してきたため、目的(システム)をさほど重視しない。
いうなれば『大事なことは試合が教えてくれる』派閥。
日本対ドイツはゲームプランとプレーモデルのぶつかり合いであり、前半と後半で異なるゲームプランを機能させた森保に軍配が上がった。
フリックに同情する点があるとすれば重要な選手を欠いていたこと。
ムシアラとフュルクルクの両方を失って撤退守備を打ち破るのは苦しいものがある。
プレッシャー下 - 非プレッシャー下
ドイツ代表のボール保持を見ていて感心するのは、2列目のアタッカーのプレッシャーを切り裂く鋭さである。
密集した守備網の内側でも素早い動き出しでボールを呼び込むことができる。
背面からプレスを受けながらハーフターンを試みては時に成功させる。
1タッチ、2タッチで守備を剥がし、短く速いパスをつないでギャップへ侵入できる。
コレクティブさとダイナミックさにおいて世界一といってもいいのではないだろうか。
他国にもガビやグリーズマンなど名手がいるものの、ドイツは計画的にこのタイプのアタッカーを量産している。
反対に、非プレッシャー下にあるディフェンダーたちの繋ぎは酷い。
パス回しが一本調子で予測可能であり、タイミングや角度の付け方に含みが無い。
少ない手数でポンポンと速いパスを繋ぐため、味方のリポジショニングの時間が稼げていない。
結果として受け手に負荷をかけるパスから大ピンチを招くシーンが頻繁に現れる。
ドイツの問題がどこからくるのか。
それは制約主導型トレーニングが行き過ぎたせいかもしれないし、ギュンドアンを中心にチームを作った代償かもしれないし、静的な立ち位置攻撃を志しているのに相互作用(繋がり)があまりに弱いせいかもしれない。
ドイツもオープンスペースを攻略目標にした方が強かったはず。守備側の目線を散らすような大きな展開が無いことも含め。